大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋高等裁判所金沢支部 昭和36年(う)33号 判決

被告人 平野正美

主文

本件控訴を棄却する。

理由

控訴趣意第二点について。

記録によれば、原判決は被告人の本件所為に対し暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項刑法第二百三十四条を適用処断していることは所論のとおりである。そして、弁護人は、威力業務妨害罪が成立するときは暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項の罪は右威力業務妨害罪に吸収されるものと解すべきであるから、暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項をも適用した原審の措置は法令の解釈適用を誤つたものであると主張するのである。然しながら、威力業務妨害罪にいわゆる威力中に暴行、脅迫も含まれることは言を俟たないところであるけれども、威力業務妨害罪と暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項違反の罪とはそれぞれ被害法益を異にし、後者の罪が前者の罪に吸収されるものと解すべきものではないから、原判決が威力業務妨害罪の外に、暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項違反の罪の成立を認め暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項を適用したのは正当であつて所論の如き法令の解釈適用の誤は存しない。

(その余の判決理由は省略する。)

(裁判官 山田義盛 辻三雄 内藤丈夫)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例